jibun09の日記

長々とした日記を書いています

夫婦と両親

「はじめまして」

30歳前後の女性が席から立ち上がった。

彼女はたった今喫茶店に入ってきた還暦くらいの男女の方を向いておじぎしている。2人の後ろには、同じく30歳前後の男性がいて、4人は席についた。女性が自分の名前を名乗っている。

一瞬、これはどんな状況だろうかと思ったのだけれど、きっと、確証はないけれどきっと30歳前後の2人は結婚前かなにかで、還暦の男女2人は男性の両親なのだろうと思う。ほかにこの年齢差の男女4人組で、若い女性が還暦の2人にだけ初対面の挨拶をする状況というのが思いつかない。

女性はとても緊張した様子で、ずっと手を膝の上に置いて背筋を伸ばしている。両親の方は比較的リラックスした様子で、父親が特に嬉しそうだ。父親は白髪で、けれど短パンとポロシャツを着た若々しい印象で、貫禄と親しみやすさのようなものがにじみ出ている感じだ。母親のほうはフィリピン系なのか、東南アジアの雰囲気のする顔立ちで、あまり話さないけれどやはり嬉しそうだ。男性のほうは席の角度から表情は見えない。けれどこの状況なら彼だけがその場にいる全員と顔見知りで、比較的落ち着いている方なのだろう。

「結婚相手の両親に初めて会う妻」と「息子の結婚相手に初めて会う両親」の瞬間の表情というのを初めて見た。

女性の緊張しているけれど嬉しそうな雰囲気と、両親のおだやかでやっぱり嬉しそうな雰囲気が、なんだかすごくよくて、見ていてじーんときてしまった。うらやましいな、とも思った。

同じ世代の友人たちはどんどん結婚していて、もちろん結婚していない人もいるのだけれど「結婚した」という情報はいろんなルートから耳に入ってくるから、その都度「ああ結婚したのか」と思う。その「ああ」という感じが重なれば重なるほど「みんなどんどん結婚していく」という感じが強まる。Facebookのタイムラインには、最近結婚に加えて子どもと一緒に写った写真をアップする友人が増えてきた。

「うらやましいな」とも思う一方で、結婚していった友人知人の中には早々に離婚した夫婦もいたり、Twitterのつぶやきが明らかに家庭生活がしんどそうだったりしている人もいて、現実にはいろいろあんだよな、と思う。

友人の中のある一人から、結婚した最終的な決め手として「親に喜んでほしかった」というのがあったと聞いた。それを聞いたときはまじかよ、と思ったのだけれど本当らしい。本当にこの人でいいのだろうか、と迷っていたのだけれど、最終的に決め手になったのは親のことらしい。

その話を聞いたときはぜんぜんわからなかったけど、今日見かけた夫婦の両親の顔を見ていたら、確かにそういうのもあり得るのかもしれないな、と思った。実際に自分がそれを決め手にするとは思えないけれど、あの4人の空間は独特だったし、ほかではなかなか見られないものだよな、と思う。