jibun09の日記

長々とした日記を書いています

KICK THE CAN CREW「千%」

気持ちが入りすぎて書けない。けど書きたいので書く。

もう、なんというかこれ以上ない形で帰ってきてくれたのだと思う。

何が嬉しかったって、KICKはおろか普段ラップとかを聞かない友人が「あの曲いいね」と言ってくれたことだ。昔のバンドが過去のヒット曲だけを再演するみたいな、ファンだけが喜ぶそういう懐古主義的な復活ではなく、KICKのカッコ良さをこれでもかという位アップデートした形で戻ってきてくれたことが本当に嬉しい。

公式サイトに3人のインタビューが掲載された。特に、下に引用したKREVAのインタビューを見て、ああKICKの魅力はこういうところにあるし、今回はそれを本当にいい形で煮詰めて形にしてくれたんだと思う。

――新曲の「千%」も、そういうものが詰まっていると思います。
「うん。例えばこの曲の《経て からの ここ》って、俺から出てきたんですけど、それは1人だったら、思いついていても歌わなかったでしょうね。この3人だとそういうのにOKを出せる感じが強いんですよ。ふざけ合って面白がれるっていうのは、大きいのかなっていう気がします。あと、それプラス真剣になれるっていうかね」

(「 KICK!」スペシャルサイト/KREVAインタビュー)

www.jvcmusic.co.jp

KREVAのソロに『挑め』という曲があって、このRemixにLITTLE、MCUがfeat.として参加したことがあった。当時の僕は久しぶりに3人の声が入った曲を聞けるとあって「実質KICKの新曲では」なんて思っていたけど、実際聞いてみるとなんか違った。当時この「なんか」は言語化できなかったのだけど、このKREVAのインタビューが端的に物語っている気がする。「3人だとOKを出せる感じ」「ふざけ合って面白がれる、プラス真剣になれる」。 「挑め」にそういう感じはなかったように思う。

やっぱりどこまで行っても『挑め Remix』の2人はKREVAの曲のfeat.アーティストに過ぎなくて、KREVAの構築した世界観の上に乗っかった2人という感じがする。MCUとLITTLEは「UL」というユニット名でアルバムを出したりフェスにも出ていたりしたけど、やっぱりこっちもピンと来なかった。いくら2人がKREVAのループの上でラップしたとしても、それはやっぱり「KREVAのトラックの上でラップしているMCUとLITTLE」という感じがどうしても拭えない。いや、この3人が交差して何か新しいものができたというだけでも当然嬉しいのだけれど、 けれどやっぱりKICKとは別ものだった。

昔、テレビか何かでKICKの曲の作り方の流れが紹介されていたのを見たことがある。まず KREVAがトラックをつくり、曲の「テーマ」を決めて、そのテーマに基づいて3人がそれぞれにバースを書いてくるという方式を取っていたらしい(全曲が該当するかは分からない)。ちなみに『イツナロウバ』のテーマは「夏と言わない」。実際、楽曲中には「クロール」「涙で濡れるグローブ」「焚火の中」「生ぬるい風が運ぶパンチラ」などの夏を連想されるワードが次々に出てくるけれど「夏」は一度も出てこない。

『挑め』の場合、テーマは「3と言わない」だった。これはこれで言葉遊びとしては面白くて、三者三様の「3と言わなさ」みたいなのが楽しかった覚えがある。けれどやっぱりテーマの強度みたいなものが弱くて「なぜこのタイミングで、この3人がこのテーマでラップをするのか」という問いの前に、言葉遊びの楽しさが霞んでしまう感じがあった気がする。

――新曲は「千%」が既に公開されていますが、制作の初期段階で出来た曲ですよね?
「はい。“十数年経って、お互いにどういうことが変わったか?”ということとかを話した時期に作ったのがこの曲です」

(「 KICK!」スペシャルサイト/LITTLEインタビュー)

 今、2017年というこのタイミングでテーマになったのは「十数年経って、お互いにどういうことが変わったか?」だった。KICKをもう一度始めるにあたってこれ以上のテーマはないし、リスナーとしてはここさえクリアできれば、ここをクリアするからこそ、言葉遊びも3人のマイクリレーも、心の底から楽しめる感じがする。

というのも、KICKが活動休止する前後に囁かれていた「 3人の不仲説」みたいなことがどうしても尾を引いていた感じがするからだ。活動休止後はKREVAだけ売れて…みたいな話が聞こえたこともあったし、2008年のROCK IN JAPANのKREVAステージにMCUとLITTLEがサプライズ出演した時も、2人は本人が言う通りまさに「世界で俺だけしか呼べないゲスト」だった。ちょっと意地悪な見方をすれば「KREVAがいなければ実現しなかったコラボ」とも言える。内情は詳しく分からないけれど、当時は「まあ3人の間にも色々あるだろうな」と思わずにはいられない感じだった。

だからこそ今回は「Triangle」になっている感じがして痺れてしまう。インタビューから3人の今の関係性、ちょっと飄々としたスタンス、でも今がやる時だと一致した感じ、こういうのが伝わってきて嬉しかった。

――ついに完全復活ですね。
「はい。数年前からキックでステージに立つようになったけど、いざ一緒にやってみると、いろんな感触を得られました。1人1人大きくなったし、考えも丸くなったかな。でも、丸くなったけど、尖ったままでお互いに尊重し合える感じなんですよね。昔からそういう3人なんだけど、さらにそうなってると思います。“完全復活”で“完全信用”できるようになったというか」(MCU

――3人で新しい曲を作るにあたって、どんなことを考えました?
「「カンケリ」とか「タカオニ」を作った最初の頃って、誰に集まれって言われたわけじゃないけど、3人で集まってやってたじゃないですか。そういうスタイルを見つめ直した感じですかね。あと、この3人で作ったものの“声”みたいなのがあるなと思ってるんです。今回、そこに真面目に向かって行きました」(KREVA

――休止に入ったのは2004年6月ですけど、キックはちょくちょく動いていましたよね。
「復活っていうことだと、2014年のROCK IN JAPAN FES. ということなんですかね? 3人の気持ちや見ているものが自然と一致しないとダメなんですよ。個々の都合や、会社の都合とかではなかなか始まらないのがキックなんです」(LITTLE)

もう書きたいことは山ほどあって、LITTLE肥えたしMCで喋るようになっちゃったなーとかでも相変わらず執拗なまでに畳み掛けるライミングは健在だなーとか、MCUは渋い声そのままにラップが確実に上手くなってるよなーとか、KREVAは個人的に「淀みない 歩き出し」のフロウが最高に好きとか、あと「来年は30です」とか言ってた人たちが40を越えて自分が30になろうとしているとか、ちょっと委細に入りすぎるのでこのあたりにします。

「復活祭」は行けなさそうだけど、全国ツアーやると聞いて今から楽しみです。あとアルバムも。